私にとっての家とは、「おもてなしの場」
A様(富山市)
旧井波町飛騨屋地区の古民家を、富山市西町のご自宅敷地内に移築再現されましたが・・
日頃から神社仏閣、富山市だったら内山邸のような侘び寂のある建物や庭など、古い佇まいが好きなんです。
職人さんが丹念に時間をかけて仕事をし、伝統を感じることができる家が。
それは今流行の古民家風というのとはまた違うんですが。
それでかねがね民家を訪ね歩いたり自分なりに調べていた時に飛騨屋の斉藤邸にたどり着きました。巡り合わせは良かったと思います、一期一会です。
我が家は普段は質素倹約を心がけますが、文化的なものに関しては、豊かな気持ちで惜しみなく費やす。志満屋(しまや)商会という家業の屋号もそこからきています。
ただ初めて斉藤邸を訪れた時は、うっそうとして暗く薄気味悪いほどの印象でした。
ですが、くぐり戸を開けるとそこには今まで見たこともないような枠の内やヒラモンがありました。
なんだこれ!と思いましたね。有り得なかった・・・
大きさ、味、ダイナミックさが伝わりました。
その瞬間、これだと実感しました。
タカハタさんとのご縁も、建築部Tさんから間取りを聞き、ほとんど思いが重なったからです。北に玄関、南にお客様をもてなす座敷があり、自分の想いと一致していました。
古き良きものを求めてそれを新しい技術にゆだねる・・・まさに温故知新じゃないですか。
随所にこだわりが見受けられますが・・・
明治15年から飛騨屋の地に130年間も建っていた家には深い歴史を感じます。
それでどんな時代だったか調べてみたんです、伊藤博文などが生きた凄い時代にあり、家のルーツもいい。
その伝統を譲り受けたと思っているので、当時の雰囲気をそのままに感じていたい。
柱に傷や穴があっても、永い年月を経てきた証。
ですから、「照明やエアコンなど極力取り入れない!」という要望を伝えました。
暑さ・寒さ・暗さも、ありのままを受け止めたいと。
「ほんとですか?!」と設計士さんには言われましたが(笑)
特に気に入っていらっしゃるところはありますか?
全部ですよ、全体の調和に満足しているので。
ただ、ここ見てください(上記右下写真)。
土間に下りる縁側の二か所に瓢箪とお猪口の形で丁寧に埋め木が。
ぴかぴかに磨いてある・・
面白いな、遊んでるな、大工さん(笑)
ご主人にとっての「家」とはなんでしょう?
家とは私にとっては「おもてなしの場」ですね。そのために掃除をしたり、草をむしったり、打ち水をしたりは修行とも言える「行」なんです。
そのまま精進していけばいい。
ただこの家は私が建てたのでも、私の家だとも思っていません。すべて先祖があってのことで、今後も次の世代に継承していく・・・そんな気持ちでいます。
住まわせていただいているという、一歩引いた気持ちで心静かに座禅を組むと心が落着きます。